第41話 胡蝶しのぶ 詳細2
村田を捕え、余裕の笑みを浮かべかけた姉蜘蛛の後ろから、しのぶがふわ……と気配なく近づいた

しのぶ「わぁ 凄いですね 手の平から糸を出しているんですか?」 
姉蜘蛛の髪や背中に触れそうなくらいの距離から耳元でささやくしのぶ 焦り、振り返る姉蜘蛛 

しのぶ「こんばんは 今日は月が綺麗ですね」 

両手から糸束を出し、しのぶに向ける姉蜘蛛 
その糸束をひらひらひらと蝶が舞うように表情を変えず軽くかわしていくしのぶ 

姉蜘蛛(!! 繭糸を少しも触れずに避けている) 

しのぶ「私と仲良くするつもりは」 
糸束を避けながら日輪刀の柄に右手をかけるしのぶ 
しのぶ「ないみたい ですね」 

姉蜘蛛に微笑むしのぶ 凄みのある笑みに真っ青になる姉蜘蛛 
姉蜘蛛(息の詰まるような圧迫…累から感じるのとは違う でもこのゾッとくる 身の竦む感覚は同じ 
"タヒ"が…… すぐ傍に来る気配) 

姉蜘蛛「まっ… 待って!! 待ってお願い!! 
私は無理矢理従わされてるの!! 助けて!! 逆らったら体に巻きついてる糸でバラバラに刻まれる!!」 

しのぶに命乞いをする姉蜘蛛を、日輪刀に手をかけたまま動きを止め、ぽかんと見つめるしのぶ 
しのぶ「そうなんですか それは痛ましい 可哀想に 助けてあげます 仲良くしましょう 協力してください」 

ほっとしたような表情を浮かべる姉蜘蛛 
姉蜘蛛「!? た 助けてくれるの?」 
恐る恐る尋ねてくる姉蜘蛛に、ニコーと笑うしのぶ 

しのぶ「はい でも 仲良くするためにはいくつか聞くことがあります 
可愛いお嬢さん あなたは何人殺しましたか?」 

考えるように少し沈黙した後、涙を浮かべる姉蜘蛛 
姉蜘蛛「………… 五人 でも命令されて仕方なかったのよ」 

にっこり笑顔でパチパチと手を叩くしのぶ 
しのぶ「嘘は吐かなくても大丈夫ですよ わかってますから 
さっきうちの隊員を繭にした術さばき 見事でした 八十人は喰っていますよね?」 

姉蜘蛛「……喰ってないわ そんなに」 

しのぶ「私は『西の方』から来ましたよ お嬢さん『西です』」 
姉蜘蛛「頃したのは五人よ」 

しのぶ「山の西側では大量に繭がぶら下がっているのを見て来ました 中に捕らわれた人々は液状に解けて全滅 
その場所だけでも繭球は十四個ありました 十四人タヒんでるんです 
私は怒っているのではないですよ 確認しているだけ 正確な数を」 

姉蜘蛛「…… 確認してどうすんのよ」 

楽しそうな笑みを浮かべるしのぶ 

しのぶ「お嬢さんは正しく罰を受けて生まれ変わるのです そうすれば私たちは仲良しになれます」 

しのぶと反対に、恐怖に冷や汗を浮かべる姉蜘蛛 
姉蜘蛛「罰?」 

だめだめ、と、左手の人差し指を立てて、首を横に振って見せるしのぶ 

しのぶ「人の命を奪っておいて何の罰もないなら頃された人が報われません 
人を頃した分だけ私がお嬢さんを拷問します」 

笑みを浮かべたまま、右手の人差し指を鍵状に曲げて自分の目に近づけるしのぶ 

しのぶ「目玉をほじくり出したり お腹を切って内臓を引き摺り出したり その痛み 苦しみを耐え抜いた時 
あなたの罪は許される 一緒に頑張りましょう」 

恐怖で真っ青になる姉蜘蛛に、更に笑顔を向けるしのぶ 
しのぶ「大丈夫! お嬢さんは鬼ですからタヒんだりしませんし 後遺症も残りません!」 

両手から糸束を出し、再びしのぶに向ける姉蜘蛛 
姉蜘蛛「冗談じゃないわよ!! タヒね クソ女!!」 

続きます