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ゴールデンカムイ 第132話 『蹂躙』
網走監獄の敷地内の宿舎は第七師団の砲撃で半壊していた。
監獄の外からの穴を通じて宿舎に逃げてきていた谷垣、夏太郎、インカラマッ組。
小屋に崩落の気配があることを悟った夏太郎は外に出ろと谷垣を促す。
谷垣はインカラマッがいないことに気付きインカラマッどこだ、と呼ぶ。

絶体絶命の谷垣とインカラマッ
「谷垣ニシパ…」
足元から微かな声でインカラマッが谷垣に応える。
インカラマッは首だけ外に出した状態で、崩落した屋根に圧し潰されて身動きが取れずにいた。
なお宿舎の崩落は止まらない。
インカラマッは自身の運命を悟り、必死で谷垣に、逃げてください、と呼びかける。
谷垣はインカラマッに乗りかかる瓦礫を持ち上げようと、屋根と地面の間に手を差し入れて屋根を掴む。

ムウウオッ、と満身の力を込める谷垣。
胸のボタンが弾け飛ぶ。
必死な谷垣を見上げるインカラマッ。
谷垣は見事に屋根を浮かせて、インカラマッが動けるだけのスペースを確保する。
出ろ、と谷垣に促され、インカラマッは何とか谷垣の元へと這い出る。
途端に宿舎は崩落し、直前までインカラマッと谷垣が居た場所に瓦礫が積もる。
谷垣はインカラマッの腕を持って立ち上がらせてその場から一刻も早く逃げようとする。
しかし瓦礫の崩落の波は、必死に外に向かって逃げようとしている谷垣とインカラマッに追いつく。
崩落する屋根に圧し潰されそうになり、谷垣とインカラマッは思わず目を閉じる。
フラグクラッシャー牛山
だが、地面にインカラマッと共に転んだ谷垣を圧し潰そうとした屋根は、その動きを止める。

「牛山!!」
谷垣が叫ぶ。
牛山は、その持ち前の膂力を以って、谷垣とインカラマッを圧し潰さんとした屋根を両手で受け止めていた。
「早くどきな」
苦しそうな表情で牛山が谷垣とインカラマッに呼びかける。
屋根の下から這い出た谷垣とインカラマッ。
インカラマッは牛山に早くこっちに来るように促す。
下を向いて必死に力を発揮し続けている牛山は、屋根を持ち上げたまま視線だけを谷垣とインカラマッに向ける。
「お前ら…幸せになるんだぜ」
「そんな…!! 牛山さんッ!!」
牛山を救おうと近づく夏太郎。
だが谷垣が夏太郎の首に腕を回して引き止める。
崩れ落ちる瓦礫。
「どっこいしょ」
牛山は支えていた屋根を思いっきり投げ飛ばす。
「背広が汚れたぜ」
何事も無かったような表情でパンパンと腕をはたく牛山。
牛山さんスゲー、と若干引き気味の夏太郎。
谷垣もインカラマッも呆然と牛山を見ている。
ドドン、と駆逐艦から何かが発射される。
発射された何かは監獄の上空を照らす。
その光に照らされる谷垣と牛山。
谷垣はそれが日露戦争で使用された照明弾だと呟く。
進撃する第七師団
上陸を遂げた第七師団は、さらに監獄内へと攻め込んでいた。
攻め込む第七師団と監獄を守る看守とで激しい銃撃戦の様相を呈している。
鶴見中尉は傍らの月島軍曹に、やれ、と命じる。
「はい!!」
月島はおもむろに手元の爆弾のピンを抜く。
尻側にある布の部分を掴んで回し、その遠心力で看守に向かって爆弾を放る。
「なんか投げたぞ」
看守が隣で機関銃を撃つ看守に注意を促す。
「え?」
緩やかな放物線を描き飛んでいく爆弾は、機関銃を撃っていた看守のおでこに、しかもちょうど信管がヒットする。
第七師団は鶴見中尉の、前進して蹴散らせッ、という号令を合図に一気に攻め込んでいく。
のっぺらぼう(偽)の独房では、白石が床をのこぎりで切断していた。
何やってんだ? と尋ねる杉元に、白石は、全ての監房の床下には通気の為に狭い空間があると説明する。
あーッあーッ! とのっぺらぼう(偽)が杉元たちに視線を送りながら叫んでいる。
作業を邪魔され、うるせえなマジで!! とのっぺらぼう(偽)に罵声を浴びせる白石。

杉元も、おとなしくしてろよ、と怒る。
しかし、のっぺらぼう(偽)は叫ぶのを辞めない。
のっぺらぼう(偽)が、その両手の人差し指で必死に指し示した方向では布団から炎が上がっていた。
杉元と白石ものっぺらぼう(偽)と同じ調子であーッあーッと叫ぶ。
アシリパは都丹庵士の「父親に会いたくないのか?」という言葉に、一度は杉元の元へと向かった足を止めていた。
アシリパは都丹庵士に向かって、都丹庵士も門倉も監獄内ののっぺらぼうが偽物だと知っていたのかと問いかける。
都丹庵士は、24人が脱獄した後すぐにのっぺらぼうは犬童によってすり替えられたのだと答える。
門倉は七年のっぺらぼうを見続けていたため、すり替えに気付かないほど間抜けではないと続ける。
「知ってて杉元たちをあそこに送り込んだのか!?」
都丹庵士に向かって必死に問いかけるアシリパ。
「おとなしくついて来い アシリパ」
都丹庵士の背後から土方が現れる。
監房が第七師団の爆撃に晒され入り口が破壊される。
門倉の元にまで爆風の余波が伝わる。
「何やってる早く逃げろッ」
門倉は逃げながら、必死で傍らの看守に呼びかける。
ドン
鶴見中尉の狙いすました銃撃が看守の顎にヒットする。
「来たッ」
その銃撃音の近さに、いよいよ第七師団の手が近いことを悟った杉元と白石。
「のっぺら坊は?」

銃を片手でジャキッ、と排莢する鶴見中尉。
その表情は歪んだ笑顔を浮かべ、脳汁が眉間を流れる。
ギンギンになった鶴見中尉のその全身からはオーラが立ち上る。
生き残った看守は素早くのっぺらぼう(偽)の監房を指し示す。
第七師団は一気に看守の示した方向に駆けていく。
門倉は見張り部屋の中に身を潜め、第七師団が通り過ぎるのを息を殺して待っていた。
通り過ぎていく第七師団兵の中に、頬のほくろに棒人間を描き足した宇佐美がいるのに気づき、門倉はギョッとする。
第七師団は鶴見中尉を先頭に、ズカズカと監房を行く。
鶴見中尉は一つの監房の扉が空いて、のっぺらぼうが立っていることに気づく。
そののっぺらぼうの傍らに杉元の姿を確認し、鶴見中尉は呟く。
「不死身の杉元」
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