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    ゴールデンカムイ 第141話 『樺太アイヌ

    小型の得体のしれない獣に襲われていたヒグマが一目散に逃げていく。
    それを横目で見送る杉元と谷垣。
    1


    鯉登少尉は残された獣を近くで観察している。

    そんな鯉登少尉に、離れて下さい、と獣に向けて銃を構える月島軍曹。


    「これがさっき言ってたヒグマより凶暴な奴なのか?」
    なんか弱そうだな、と余裕の表情の鯉登少尉。
    「目もつぶらで可愛いではないか月島軍曹」

    獣を警戒している杉元。
    リュウが獣と距離をとっている事を指摘し、狂暴さを感じ取っている。


    ゴルルルッ

    獣が鯉登少尉の背後に素早く回り込み、その背中に噛みつく。
    2


    雪上に俯せに倒れる鯉登少尉。
    月島ァ! と叫び助けを求める。


    北海道には樺太とは違う動物が生息している。
    鯉登少尉の背中の上で噛みついたままの獣はイタチ科のクズリ、英語ではウルヴァリンと呼ばれる獣だった。


    ヒグマからも獲物を横取りするほどに狂暴な気性を持つことから、現地のロシア人からは「熊より恐ろしい」対象として警戒されている。
    3


    月島軍曹はクズリの腹を蹴り上げて鯉登少尉の背中から吹っ飛ばす。

    木にぶつかったクズリに銃の照準を合わせるが幹に命中する。


    「こいつ素早いぞッ」
    月島軍曹は次弾を銃に込める。


    チカパシの挺身
    クズリはクマを始めとした大型の哺乳類に対して、木の上から相手の背中へ飛び掛かって背骨を攻撃する。


    木の上からジャンプするクズリ。
    樺太アイヌの女の子に背後から襲い掛かる。


    チカパシが抱き着くような形でクズリから身を挺して樺太アイヌの女の子を守る。
    4

    「でかしたチカパシ」
    杉元がチカパシの背中にくっついているクズリの背中と後頭部の皮を持って引き剥がす。
    「その子を連れていけッ谷垣」

    谷垣が女の子とチカパシを抱き寄せる。


    「その子はアシリパさんの情報を持っている」
    必至の形相で叫ぶ杉元。

    5
    そして、クズリを雪上に抑えつけたまま、月島軍曹を見る。
    「投げるぞッ いいか月島軍曹ッ」

    よしッ、と銃を構えた月島軍曹が一言合図で杉元がクズリを投げる。

    ボンッとクズリが雪上を弾むクズリ。

    ドンッ

    月島軍曹がクズリを狙撃する。

    やったか? とクズリのいるであろう方向を見ながら杉元が呟く。

    「わからん」
    月島は鯉登少尉を背負いながら答える。
    「とにかく離れるぞ 走れッ」
    6

    谷垣は女の子とチカパシをそれぞれ脇に抱えて、杉元達よりも先行してその場を逃げている。

    その場を後にする杉元達。


    危機一髪
    「来たぞ月島ァ!!」
    月島軍曹に背負われたままの鯉登少尉が呼びかける。


    クズリは体長わずか1メートルほどだが、足の裏が成人男性の手の平ほど大きく雪上でも素早く移動する。


    鯉登少尉を背負ったままの月島軍曹は銃を使えない。


    「杉元撃て!! 追いつかれるぞッ」
    慌てる月島軍曹。


    杉元は月島軍曹に言われる前に、既にクズリに向けて銃の照準を合わせている。
    銃が苦手な杉元の表情に大量の汗が流れる。


    「エノノカ!!」
    犬橇(いぬぞり)に乗った樺太アイヌのおじいさんが颯爽と現れる。
    7


    犬橇だ!! と谷垣。


    「ヘンケ(お爺ちゃん)!!」
    アイヌの女の子――エノノカが笑顔で呟く。


    一行は急いで犬橇に乗る。

    そしてすぐに犬橇は走り出す。


    後に残されたクズリが遠くなっていく。

    「トホ! トホ! トー!」

    「トホ! トホ! トー!」


    前進! と犬に命令するヘンケ。


    「あきらめたみたいだぜ」
    クズリが追ってこない事からそう解釈する杉元。


    谷垣いじり(笑)
    ヘンケは進行方向から目を逸らさずに、パーセ(重い)!! と一言口にする。

    「ヘンケが『重い』って言ってる! 犬が疲れちゃう」
    エノノカが後ろに乗っている杉元達に向けて呼びかける。


    「谷垣一等卒!! 貴様のせいだ」
    鯉登少尉が真っ先に谷垣に向けて言い放つ。
    「牝牛のように太りよってからに!!」

    ええ? と戸惑いを見せる谷垣。

    「そうだな… 肥え過ぎだ」
    杉元は谷垣の腰に回していた手を上にスライドさせ、谷垣を橇から投げ捨てる。


    鯉登少尉が雪上を転がる谷垣。
    お尻がプリンッと弾む。


    「走って痩せろ谷垣一等卒」と鯉登少尉。

    樺太アイヌの集落
    大泊の近く、樺太アイヌの集落に辿り着いた一行。


    千島、北海道、樺太と三つに分かれているアイヌ文化。
    当時の樺太アイヌは漁業中心の生活をしていたという。


    一つの木造りの小屋を手で示すエノノカ。
    「私とヘンケここでふたちで住んでる でもここ『夏の家』」
    寒くなると『夏の家(サハチセ)』のすぐ近くにある『冬の家』に移るのだと説明が続く。
    8


    樺太アイヌは家がふたつあんの? と杉元。


    集落まで走り切った谷垣が腰を下ろしているすぐそばではヘンケが犬橇を引く『犬繋ぎ竿(セタクマ)』に犬を繋ぐ作業をしている。


    リュウは犬橇を引く犬の集団の中で、ただ一匹頭頂部に飾りをつけられている犬を見て、憧れているような素振りを見せる。


    こっちが『冬の家』、と雪で覆われた家へと案内される杉元達。


    トイチセと呼ぶその家はまるでかまくらのような形状をしているが、その中はきちんとした木で作られており、家具もあり、煙突もある。


    北海道よりもさらに北に位置する樺太で、その過酷な自然環境に適応した結果生まれた文化である独自の生活だった。


    「臭い臭いッ 何を塗っているのだ!?」
    ヘンケが上半身をはだけた鯉登少尉の背中に何かを塗り込んでいる。


    熊の油は傷に良いのだそうです、と月島軍曹が説明する。



    エノノカ
    「助けてくれてありがとう」
    笑顔でチカパシを見るエノノカ。
    「名前は?」


    「おれチカパシ ちんちんが勃起するって意味だ!!」


    ボッキ? と不思議そうに呟くエノノカ。
    「わたしエノノカ 『フレップ(コケモモ)』って意味」
    エノノカは、フレップをたくさん食べて全部戻したから付いた名前だと説明する。


    ほかに名付けるきっかけ無かったのかい? と静かに突っ込む杉元。

    「北海道から来たアイヌの女の子もうちでフレップ食べた」
    杉元の顔を見つめるエノノカ。
    杉元から受けとったアシリパの写真を見て、この女の子! と答えるエノノカ。

    連れの男たちがいなかったか? という杉元に、
    9

    エノノカは、三人いた、と即答する。

    「この男はいたか?」
    谷垣がキロランケの写真をエノノカに見せる。

    いた、とエノノカ。
    「『北へ向かう』って言ってた」
    10


    北…と谷垣が呟く。


    アシリパが樺太にいると確信
    「女の子はどんな様子だった? 元気だったか?」
    杉元が真剣な表情でエノノカを見つめる。


    「元気ない とてもとても悲しそう 何も話さなかった」
    11


    「……」
    エノノカの答えを聞いて俯く杉元。



    「でも…フレップの塩漬け出したら食べた」


    杉元達の前にはフレップの塩漬けがある。



    「…」
    一口食べる杉元。
    「しょっぱくて酸っぱくて甘い…」


    「フレップいっぱい食べたらちょっと元気になった」
    口いっぱいにフレップを頬ばるアシリパを思い出すエノノカ。
    「ちょっと笑って『ヒンナ』って言ってた」



    「……アシリパさんだ 間違いなくアシリパさんだぜ」
    安堵したように笑う杉元。
    「確かにこの村にいた やっぱり樺太に来てたんだ…!」
    12


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    ゴールデンカムイ 第138話 『樺太へ

    全焼した網走監獄の舎房。
    1

    まだ白い煙がたちこめている柱と梁だけになった舎房跡から焼死体を運び出していく第七師団兵たち。

    土方、牛山、夏太郎、門倉、都丹庵士は教誨堂の地下、のっぺら坊が監禁されていた監獄に身を潜めていた。
    2

    地下を探索し、土方は犬童が情報を整理していた部屋を見つける。
    3

    土方と門倉が通じていたことは筒抜けであり、自分たちの情報がきちんと調べられている。

    自分をおびき寄せるために脱獄囚の情報もあると確信する土方は網走を出て南へと進路をとることを決定する。
    4

    一方、樺太の漁港へと着いたアシリパ、白石、キロランケ、尾形。

    誰が杉元を撃ったのか、白石はアシリパに問うがアシリパは分からないと首を左右に振る。

    第七師団から治療を受け、ベッドで苦しそうなインカラマッもまた照明弾の轟音でウイルクと杉元を撃った発砲音がわからなかったと証言。

    杉元はあんな狙撃が出来るのは尾形しかいない、撃たれた瞬間あいつを感じた、と尾形の仕業だと確信する。
    5


    尾形は、頭を撃ち抜いた杉元がひょっとしたら生きているかもしれないと不敵に笑う。
    6

    杉元は裏切った尾形とキロランケを殺してやると殺意を燃やし、杉元たちが集めた刺青人皮をうっとりと抱きしめる鶴見中尉にキロランケたちが樺太に行ったという根拠を問う。
    7

    鶴見中尉は杉元にインカラマッから聞いた話を説明する。

    白石、そしてアシリパを小脇に抱えて逃げるキロランケ、を追いかけるインカラマッ。
    8

    キロランケはインカラマッが危険だと叫び、いち早く白石にアシリパと一緒に逃がす。

    キロランケの言葉を信じるな、と叫ぶインカラマッの喉元にキロランケは黙れとマキリの刃先を突きつける。

    揉みあいになり、インカラマッの腹にマキリが刺さる。

    刺すつもりはなかったと顔を青ざめさせるキロランケ。

    インカラマッは自らマキリを掴み腹部に留める。
    自分を刺した人物がキロランケであることを示す証拠を残そうとしていたのだった。
    9


    杉元を担いだ谷垣がやってきて、キロランケは逃げる。

    鶴見中尉は、キロランケたちがアシリパを手にした以上、仲間であるパルチザンとの合流を果たすために樺太に渡った可能性が高いと説明する。

    杉元は第七師団だけで行ってもアシリパは信用しないとして樺太同行を申し出る。
    そして、アシリパを確保して暗号解読が解けたら二百円をくれと要求する。
    10

    谷垣も、アシリパが信用しているのは杉元と自分の二人だけと同行を申し出る。
    11

    鶴見中尉は網走監獄で派手に暴れた後処理が残っているため、少数精鋭の先遣隊を樺太に送ると月島軍曹、鯉登少尉に白羽の矢を立てる。
    12

    鯉登少将の駆逐艦は樺太を目指し航行する。
    13


    息子の鯉登少尉が死ぬかもしれないのに良いのかと鯉登少将に問いかける杉元。

    鯉登少将は、息子がいずれ指揮官として働くために進んで困難に立ち向かうべき、と言い、さらに指揮官として預かっている若い命をよそに自分の息子だけを危険から遠ざけるわけにはいかないと答える。
    そして、アシリパにサバイバルや戦いの術を仕込んだのっぺら坊もまた同じであり、娘を利用しようとして育てたわけではないだろうと続ける。

    「アシリパさんに伝えなきゃいけないことがたくさんある」
    14

    駆逐艦は樺太を間近にしていた。
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    ゴールデンカムイ 第137話 『呼応

    アシリパとウイルクの記憶。
    1


    幼いアシリパがウイルクから熊の生態について実地で教えを受けている。


    正確に熊の行動を当てて見せるウイルクに、ただただ驚くアシリパ。


    ウイルクはアシリパに対して、今、観察している熊を仕留めろと命じる。
    2


    幼いアシリパは心細さに一瞬ウイルクに頼りかけるが、
    容赦なく向かってくる熊に対して冷静に矢を放ち、樹上に登って、
    熊が手を伸ばして来るのに合わせて毒を塗ったマキリを打ち込み見事に斃す。
    3


    傍らで銃を片手に見守っていたウイルクはアシリパを抱き上げてアシリパを褒める。


    頬にキスしてくるウイルクを嫌がるアシリパ。
    4


    そして現在、アシリパは双眼鏡でのっぺら坊の目を見て、のっぺら坊がウイルクであることを確信する。
    5

    6

    間違いないのかと問いかけるキロランケ。
    7

    8

    一方、地上で杉元から借りた双眼鏡でのっぺら坊はアシリパを見上げていた。
    9


    その視界にはなめざめと泣くアシリパの姿が入る。


    杉元はのっぺら坊がウイルクだと理解したかと問いかけるがウイルクはそれには答えず、
    アイヌを殺したのは自分ではないと唐突に告白を始める。
    10


    問い返す杉元に、ウイルクは金塊についてアシリパに伝えるよう前置きし、話そうとするが、
    11

    次の瞬間右前頭部を銃撃されされる。
    12


    その様子を双眼鏡で見ていたインカラマッが上げた、ウイルクが撃たれた、という声にアシリパが前を向く。
    13


    その瞬間、今度はウイルクの体を抱き留めようとした杉元が左前頭部に銃撃を受ける。
    14


    仰向けに崩れ落ちる杉元。
    15


    その様子を目撃していたアシリパが、杉元ォ! と叫ぶ。


    ウイルクと杉元を銃撃したのは尾形。
    16


    右手で髪を撫でつける仕草を行う尾形は何の感情も浮かべることなく冷静に杉元たちを見下ろす。


    金塊の謎を解く鍵を持つのがアシリパだけになり、金塊を追う者すべてに追われる立場となったことを悟ったインカラマッがアシリパに逃げろと催促するのだった。
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    ゴールデンカムイ 第136話 『最後の侍


    「止まれッ 誰か来る」
    白石が複数の人影を発見し、建物の陰に隠れながらアシリパを制する。
    1


    見えてきたのは谷垣、インカラマッ、牛山、夏太郎の姿だった。


    みんな揃って正門に行き、待機している白石達の元へさらにキロランケが合流する。


    アシリパが開口一番キロランケに、杉元は? と問い質す。

    キロランケは杉元を舎房から出したが、その後はのっぺら坊を連れてきて必ずアシリパに会わせるべく、ひとりで教誨堂へと向かったと報告する。
    2


    教誨堂には土方と犬童もいると言うキロランケの言葉に夏太郎が助太刀しなくては、と牛山に呼びかけながら走り出す。


    待てといいながら夏太郎を追う牛山。


    さらにその後を追おうとするアシリパの頭をキロランケが掴む。
    「お前は言ったらダメだ」


    アシリパはキロランケを見上げながら、でも、ともどかしそうな表情で訴える。


    谷垣がふと傍らを見ると、インカラマッが外壁に備え付けてある梯子を上り始めている。
    「インカラマッ!?」
    3


    インカラマッは、梯子は屋根の雪を下ろすために登るための梯子で、高所から見下ろせば確認できるかもしれないと説明し、梯子をどんどん登っていく。


    屋根に登ったインカラマッが辺りを見回す。
    4


    介錯

    教誨堂。

    犬童が土方の前に跪いて握りこぶしを固めた両腕で土方の腹にもたれかかってうめき声を上げる。


    犬童が土方の服をポケットに手を入れるようにして掴んだために、ポケットが破れ、そこからアシリパの写真が床に落ちる。
    5


    土方は崩れ落ちる犬童を静かに見下ろしている。

    犬童が手を降ろし、土方と繋がっている鎖が音を立てる。
    その腹からは床に向けて内臓が飛び出ている。


    「やれ」
    床に跪き俯いたまま、犬童は一切取り乱すことなく静かに土方に介錯を頼む。
    「最後の侍…」
    6


    土方は無言で犬童の首に向けて刀を振り下ろす。
    その切り口は見事に皮一枚を残し、犬童の首が床に落ちる。


    杉元、本物ののっぺら坊との邂逅

    二階堂を連れて行った第七師団兵から姿を隠していた杉元が床下から這い出る。
    その目の前には杖をつき膝をついている囚人の姿。


    照明弾が降り、のっぺら坊の顔が照らされると、杉元はその目が青い事を確認する。
    7


    膝歩きで杉元からゆっくりと離れていくのっぺら坊に、背後から杉元が声をかける。
    「これが何かわかるか?」
    杉元の右手にはアシリパから預かっていたメノコマキリ。


    振り向いたのっぺら坊が答える。
    「アシリパのマキリ…どうして…それを持っている?」


    やっぱりか、と杉元は確信する。
    「やっぱりのっぺら坊はアシリパさんの父親だったのか…」
    8


    のっぺら坊は杉元にアシリパがここに来ているのかと問いかける。


    「来いッ」
    杉元がのっぺら坊の囚人服の袖を掴む。
    「全部話してもらうぜ」


    のっぺら坊は袖にかかった杉元の手を払いのける。
    「金塊……知りたければアシリパを連れて来い」


    「金塊?」
    杉元は、それも聞かせてもらうけどよ、と断り、あんたにはずっと言いたいことがあったと先を続ける。
    「本当はなぁ…あんたをアシリパさんに会わせたくねえよ!!」



    杉元は、アシリパが、もし本当にアイヌ殺しと金塊強奪をやってのけたのっぺら坊が自分の父親だったらどうしようと怯えていたと指摘する。
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    そして、なぜ土方に直接金塊の在り処を伝えずに「胡蝶部明日子」という和名を土方に教えたのか、独立云々でどうしてアシリパを巻き込む必要があった、とのっぺら坊を指さし声を荒げる。
    10


    「…未来を託すため」
    のっぺら坊が口を開く。
    「アシリパは山で潜伏し戦えるよう…………仕込んだ」
    「私の娘は……アイヌを導く存在…」
    11


    アイヌを導くだって? と杉元が呼吸を荒くしながらも反応する。



    土方歳三が新聞記者(石川啄木)にアシリパの事について書かせるつもりであることを白石から聞いたという杉元は堰を切ったようにのっぺら坊に言い募る。


    「新聞を使って世論を誘導しアイヌの独立運動にアシリパを利用する気か?」


    「アメリカ南北戦争のように北海道と内地は下手すりゃ戦争だ」


    「あの子をジャンヌ・ダルクにでもしようってのか?」


    その頃、舎房では第七師団と囚人たちとの戦いの趨勢がほぼ決していた。
    火事の煙が房内を満たしつつある。
    12


    「どうしたこっちは遊び足りんぞ!!」
    囚人の死体に囲まれながら鶴見中尉が逃げ始める囚人たちに向けて叫ぶ。
    「有坂閣下の『坊や』に挨拶しろ!!」
    膝をつきながら、囚人たちに向けて銃口の狙いを定めた機関銃を発射する。


    ついにアシリパとのっぺら坊が……

    「あの子を俺たちみたいな人殺しにしようってのか!!」
    杉元がのっぺら坊の囚人服の襟を掴んで訴えかける。

    13
    大義はご立派、誰かが戦わなくてはならないかもしれないが、それはアシリパではなくてもいいだろう、と言う杉元。
    「アシリパさんには…山で鹿を獲って脳みそを食べてチタタプしてヒンナヒンナしていて欲しいんだよ俺はッ!!」


    「シサムよ…あの子に随分と仕込まれたようだな…」
    のっぺら坊が静かに口を開く。


    そして、杉元を見据えていた青い目が高所の何かを視界に捉える。
    「あの着物は…」
    のっぺら坊が見つけたのは屋根の上で辺りを見回しているインカラマッだった。
    14


    同時に、インカラマッも赤い囚人服と一緒にいる杉元を見つける。
    「アシリパちゃん上に来てくださいッ のっぺら坊と杉元ニシパがいますッ」
    大声で地上のアシリパ達に知らせるインカラマッ。
    15


    「どうだ見えるか?」
    杉元はのっぺら坊の目に自身の双眼鏡を当てて屋根の上を確認させていた。


    「…………インカラマッ」
    一言だけ口を開くのっぺら坊。


    土方は負傷した肩の血の止血の為に、二の腕に巻いた布を絞っていた。
    駆けつけた夏太郎と牛山に向けて、のっぺら坊が近くにいるはずだ、探せと命じる。
    16

    インカラマッと同様に屋根の上に登るアシリパとキロランケ。

    アシリパは大きくなる自身の胸の拍動を感じながら双眼鏡を覗く
    17


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    ゴールデンカムイ 第135話 『鎖デスマッチ

    1

    杉元の左拳が二階堂の右頬にヒット。

    続けて銃床で二階堂の顎を救い上げるように打ち付ける。

    そして杉元は銃床を振り上げた腕を戻しながらその流れで、
    右頬に刺さったままだった二階堂の銃剣を右手で素早く引き抜き、二階堂の顔を狙って突き立てる。


    二階堂は杉元を睨みつけながら自身の左頬を右腕で銃剣の刃先をガード。刃先は手首に埋まる。


    杉元はさらに二階堂を足裏で思いっきり蹴とばし、二階堂が倒れ込んで距離が出来た所を狙い撃ちにしようと銃を構える。


    二階堂は立ち上がるどころか寝転がったまま右膝を腹につけるように折り畳み、右足の裏を杉元に向ける。

    杉元は二階堂に銃で狙いを定めながら、二階堂の足裏を自分に向けて来るその妙な仕草に疑問を抱く。


    その瞬間、構えていた照準を放棄し、自分に足裏を向けている二階堂の右足に向けて銃床を打ち付ける。

    自身に向けられていた足裏が下にずれ、その瞬間に二階堂の右足に仕込まれた銃が火を噴く。


    杉元の左足ふくらはぎに銃弾がヒットし、肉が抉れる。
    2

    二階堂が腕を後ろに突き出して素早く起き上がり、仰向けに倒れた杉元の顔の上に右足を乗せる。
    その右足裏の土踏まずの辺りには銃が発射された穴が露出している。


    「洋平ッ 杉元がそっちに行くぜぇ!!」
    二階堂は自身のしているヘッドギアの顎の耳に向けて呼びかける。

    メギョッ

    杉元は素早く二階堂の右足の義手を膝から真反対に折り、足裏を二階堂に向ける。
    3


    その瞬間に再び火を噴く仕込み銃。


    二階堂に右手にヒットし、右手は原型を留めないほどにまで吹っ飛ぶ。
    4


    杉元は二階堂の右足からもぎ取った仕込み銃の義足で二階堂の左頬を激しくフルスイングし、仰向けに倒れた二階堂の顔を何度も義足で打ち付ける。
    5

    その時、背後から聞こえた銃声。杉元は素早く反応する。

    走ってきた第七師団兵が倒れている二階堂を発見する。


    杉元はすぐそばの建物の床下にうつ伏せに身を潜めて第七師団兵の目を免れていた。
    二階堂の仕込み銃でえぐれた左ふくらはぎから地面に血が流れている。


    歯を食いしばり、前を向く杉元。その息は荒い。
    「のっぺら坊をアシリパさんに会わせる…アシリパさんに……!!」
    6


    土方対犬童の鎖デスマッチ

    教誨堂。



    土方と犬童がそれぞれ左手首を鎖で繋がれ、向かい合っている。


    「榎本武揚は…いまや『子爵』だ」
    サーベルを構える犬童が土方に語り掛ける。
    「旧幕府軍として箱館戦争で共に戦った男は貴族になり…かたや土方歳三は年老いた脱獄囚…」
    7


    鎖がジャギッ、と音を立て、お互いの間で張り詰める。


    土方は鎖に繋がれた左手首を引きながら、犬童を静かに、真っ直ぐ見据える。


    「榎本武揚のように明治新政府軍へ下り『任官』でもしていれば30年以上も鎖に繋がれずに済んだものを…!!」
    犬童は左手首の鎖をギリギリと引きながら土方を憎らしそうに、恨めしそうに睨め上げる。


    土方は右手で腰元の刀をすらりと抜く。


    それを合図にしたように犬童が左腕の鎖を思いっきり後ろに引き、引き寄せられた土方に向けて真っ直ぐにサーベルを突き出す。


    刀の腹で軌道を逸らしてサーベルの刃先を躱す土方。


    返す刀で切り返す土方の袈裟懸けの斬撃を犬童は眼前に張り詰めた鎖で防ぎ、サーベルで土方の右肩を切り上げる。


    土方の右肩に大きな傷が出来、ブワッと血が流れ出る。


    「ふんッ」
    犬童は再び思いっきり左手首の鎖を後ろに回すように引き、犬童を中心にして生じた遠心力で土方はバランスを失って床に倒れ込む。

    片膝をつき起き上がる土方。肩からの出血は激しさを増し、床をしとどに濡らす。



    「命乞いをしろ!!」
    犬童が土方にサーベルの刃先を突きつけて叫ぶ。
    「私に服従し私の部下になれ」
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    「毎朝私の靴を磨きご機嫌をとれ!!」


    土方は、この期に及んでまだ私に明治新政府へ転べと? と揺るぎない拒否の意思を見せる。


    犬童のサーベルによる斬撃。


    土方は刀で受ける。



    犬童の土方への執着の理由

    土方は、自らの軍門に下れという犬童の真意を見透かしていた。



    犬童を始めとした新政府の人間は、徳川への「忠」を新政府は「仇」で返したにも関わらず、国策として国民に対して「忠」を教えなければならなかった。
    その自己矛盾の解決のために、今なお「忠」を尽くす土方のような旧幕府軍人の思想を「転向」させて配下に置く事で正当化を図ろうとしていた。



    「貴様らは怖いのだ…」
    犬童の魂胆を見透かしたような土方の静謐な目が刀と重なる。
    「殉教者となった旧幕府軍人が怖くてたまらんのだ」
    9



    「忠」を保ったまま死んだ人間は二度と「転び」することもなく時間の経過とともに美化されていくため、自分を殺さなかった、と土方。


    犬童自身の、そして死んだ兄の生き様を肯定するために、「忠」に生き、対立している土方を「任官」させて自身の配下に置く。


    土方は、それが犬童の歪んだ復讐の成就の時だと喝破する。


    「今日この瞬間まで私のような田舎育ちの農民が貴様ら武士を凌ぐ忠義を貫いているという真実に耐えられんのだ」
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    「四肢を切り落としてでも服従させるッ」
    怒りを隠そうともせず、土方に向かって吠える犬童。


    決着

    土方は犬童との会話の最中、左手を肩から流れる血を溜める器のような形にしていた。

    流れる血は、いまや土方の掌になみなみと溜まっている。


    ジャギィッ


    犬童が怒りに任せて左手首の鎖を後ろに引く。
    土方はその力に逆らわず、手のひらに溜めていた自らの血を犬童に向けて差し出す。


    土方の血は犬童の目を塞ぐように目元を濡らす。
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    犬童の視界は暗転する。僅かに捉えていたのは横たわる都丹庵士のみ。

    その瞬間、土方と犬童との間で張り詰めていた鎖がゆるむ。

    ズドッ

    土方は前に踏み込み、視界を失ってその身を屈めた犬童の左胴を刀で斬り上げる。

    犬童に振り向く土方。
    「生け捕りに出来るほどまだ老いちゃいない」
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