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キングダム 第515話 『小城の流民

舟に乗る若き日の信と貂

ナレーション~

群青たる峡と澄みたる流れ。

山河と戯れ、水と寝る。

俄かに響くは友の醉。

声を肴に、船を揺籠に、

水上で見るは中華統一の夢・・・。


【衝撃の急報】咸陽に響く!!

昌平君達の渾身の策が露と消え、

趙王都圏、〝鄴攻め〟に暗雲が・・・!!?



【秦王都 咸陽】

文官「連合軍が列尾を捨てただと!?」
伝令「城に秦の旗は立ててありますが兵は残っておりません」

「王翦将軍からは〝列尾はすぐに趙に奪還される故 補給は送るな〟とのことです」



文官「なっ、何じゃとォ!?」


政「・・・・・・」




介億「殿・・・軍が列尾を捨てたということは・・・」
昌文君「・・・・・・」






昌平君「・・・ああ」

「〝我々の授けた策〟を捨てて」

「今連合軍は〝王翦の策〟で動いているということだ」
1 (8)

政(王翦の策・・・)




文官たち「・・・・・・」

「・・・・・・」

「何と・・・」




昌文君「バカな・・・なぜ列尾を・・・」

「なぜ我々の策を捨てて先へ進んだのだ・・・」





介億「ここまでは間違いなく上策であった」

「・・・が」

「現場の何らかの理由で捨てざるをえなかったのであろう」
昌文君は机をドンと叩く

昌文君「ならば即座に全軍退却すべきであろうが」
「連合軍は今持っている兵糧が尽きる前に」
「あの鄴を落とさねばならなくなったのだぞ」
文官たちは、緊張した表情になり、昌平君、政も不安な表情になる




昌平君「・・・して、今の連合軍の動きは?」
伝令「ハッ」
「失礼します」
「まずは楊端和軍五万が分離し趙軍九万と交戦に入った模様です」





昌平君「本軍進軍の為の盾か」
昌文君「・・・」

「では それで本軍はどの辺りまで鄴に近づいておる」
伝令「・・・・・・」

「いえ、それが」
「本軍は鄴へと向かわず近くにあった吾多という小都市へ攻め入ったと・・・」
昌平君「!?」





介億「!?」
昌文君「・・・なっ どっ、どういうことだ」





文官「兵站が切れたなら急いで鄴を攻めねばいかぬのではないのか!?」






昌文君「・・・」
昌文君(・・・・・・兵糧を奪うため・・・・・・)
介億(ーーーではない!)






昌平君「・・・・・・ ・・・・・・・」
政「昌平君・・・」
「一体何が・・・」
昌平君「・・・・・・」
昌平君は首を振る
2 (1)

政は焦った表情をしている

政「・・・・・・」





昌平君「・・・・・・」




(何だ・・・)
(王翦・・・・・・)
(そこで一体何をしている・・・)

場面は変わり、

次の城へとやって来た信たち



信「・・・・・・」
「ほ・・・本当に前の城と全く同じことを・・・兵糧を奪って・・・」
「民間人を外に追い出して」
「これに一体何の意味があるってんだよ」





王翦は民衆が移動するのを見ながら
「・・・・・・」
「よし」
「流れはできつつある」
亜光(流れ・・・?)




信が王翦将軍の方へと向けて

信「ヤイ、王翦将軍 俺達はこんなことやってる場合なのか!?」
「一刻も早く鄴へ向かうべきなんじゃねェのか!?」




貂が慌てて信を止める

貂「し、信っ!!」
信「山の民達はその為に盾となって今戦ってんだろーが」
蒙恬「おバカの特権」

じい「皆が口にしたくてもできないことを・・・」
そこへ、王翦将軍が信たちの前に現れる
1 (1)


蒙恬「!?」



王賁「!」



信「!!」



王翦に圧倒されて信は言葉がでない

信「おっ・・・」
渕「・・・ア・・・」





王翦は信が持っている矛を見る
信「?」
王賁「!」
蒙恬(王騎将軍の矛・・・)


王翦「・・・・・・」
王翦「最初の位置から李牧が最短で邯鄲に戻るにはあと一日かかる」

「そこから王都圏の軍を統制し動き出すのに一日 それらが鄴を守りに到着するのに一日

「そでまでにこちらの〝仕掛け〟をすませておく必要がある」
貂「!!」

信「!!」
2 (1)
 
王翦「ここから鄴までの間にあと七つ城がある」
「王翦軍・桓騎軍そして楽華・玉鳳・飛信隊の合同軍

この3つの軍に分けて西から順に足並みをそろえて落としてゆく」




一同「!!」

「!!」

 

信「えッ」


蒙恬「・・・」



王翦「やることは同じく 兵糧を全て奪い民を〝東〟へ追いやるのだ」



蒙恬「!」

王賁「!」
貂「・・・・・・」
(〝東〟・・・・・・)
そこへ伝令がやって来て急報を伝える

伝令「急報ー」

王翦軍「!?」 「!?」
伝令「列尾が趙軍の手に落ちました!」
「太行山脈に沿って南下してきた軍およそ五万が占拠し」
「外にまで展開布陣し始めたそうです」



信「!!」




渕「列尾がっ・・・」
「っ、ついに出口がふさがれたっ」
軍兵「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
信「いよいよ活路は〝東〟だけだ」
2 (2)


緊張した表情の信、蒙恬たち



王翦「楊端和に伝令を出せ」

「本軍の動きと足並みをそろえよと」
亜光「ハ!」



軍兵「!?」 「!?」




王翦「ここからは」
「急ぐぞ」
1 (2)


亜光「ハ!」

場面は変わり、
ナレーション~


【馬知平野】 楊端和軍 vs 公孫龍軍
趙兵「・・・・・・」
「チッ」



「奴らこちらが攻めねば動いていませぬな・・・」

「そのくせつつくと狂ったように白兵戦に出てきよる」
「山猿共め 半分の軍で我らの足止めができていると思って

得意になっておるのではありませぬか?」
公孫龍「足止めを図っているのはこちらの方だ

列尾を封じた時点で秦軍への兵糧攻めは始まっている」




「中で秦軍が何をしているのか知らぬが

刻一刻と奴らの首が締まっていっているのは間違いない」
「飢えを感じだして初めて気付くであろう

趙王都圏に足を踏み入れた事が取り返しのつかぬ愚行であったことに」
1 (3)


趙兵「将軍、報告です 敵が〝東〟へと少し隊を動かしています」




公孫龍「・・・・・・」
「何も状況は変わりはせぬ」
「距離を保ったままついて行くぞ」
部下「ハハ!」
ナレーション~

【現在の状況】
1 (4)


王翦の細かい指示に従い

三軍が展開し中・小の都市を落として回ったため

城を追われた難民の群れは増え続ける一方であった





民の群れ「ハッ」
「ハッ」「ハッ」

「ホギャ」 「ホギャ」

「お腹すいた!」

「腹へったよォ」
民衆「黄弁様 我々は北の遼陽の出が多い 遼陽ヘ向かった方が厚く保護されるんじゃ」
黄弁「・・・・・・」

「ダメだ北では十五万規模の戦場が広がっているそうだ」

「行けば巻き添えをくらう」




民衆「えっ」
「ヒィ」




黄弁「ハッ」

「ハッ・・・とにかく・・・」
「今は〝東〟へ向かうしかない」
民衆「ハッ」
「ハッ」「ハッ」
「腹へったー」
「ホギャ」「ホギャア」「うわーん」




場面が変わり、【山旦城】
城から移動していく民衆を見ている信たち




信たち「・・・・・・・・」

「・・・・・・」
信「難民作って落とした城は占拠せず軍は次へ動かす・・・」
「マジで一体何やらされてるんだよ俺達は」
王賁「・・・・・・」



蒙恬「・・・・・・」





羌瘣「・・・・・・」
「あ」
「分かった」
貂「?」
尾平「おー」

「何が分かったのかな羌瘣ちゃああん」
羌瘣「・・・・・・」





「イナゴだ」
1 (5)


田有「?」




貂「イナゴ?」




信「・・・・・・」



王賁「・・・・・・」




蒙恬「・・・・・・」




王賁と蒙恬が同時に気付く

「!!」
「えっ!」
1 (6)


ナレーション~
そして
王都圏南部に難民の大行列が出現していたその時・・・
ついに
李牧が王都邯鄲へ到着した!
1 (7)


「李牧様」

「李牧様」




ナレーション~

王都圏南部に出来た奇妙で巨大な民の波!!
そんな最中、ついに最大の敵・李牧が王都に到着する!!