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    ゴールデンカムイ 第134話 『教誨堂』

    駆逐艦の砲撃音に都丹庵士は苦んでいた。

    大丈夫か、と都丹庵士を心配して振り返る土方に、都丹庵士は早く建物に入ることを促す。

    土方が傍らを見ると、そこにいたはずのアシリパの姿が見えない。


    都丹庵士も揃って辺りを見回すがやはりその場からアシリパは立ち去っていた。


    敷地を必死に駆けるアシリパ。


    土方はアシリパが杉元の元へ戻ったと判断し、のっぺら坊の居場所を聞き出すまで自分のところにいたアシリパを強かな娘だと呟く。


    連れ戻すかと問う都丹庵士に、
    土方は犬童を逃がさない事を優先すると答え、アシリパと撮っていた写真を手元で広げる。
    「これでなんとか信じさせるしかないか…」
    1



    アシリパ、白石、キロランケが合流

    杉元の元へ向かっていたアシリパの口を、建物の陰から伸びた手が塞ぐ。
    2

    「静かに」
    キロランケが、機関銃を持って敷地内を走り回っている見張りからアシリパを匿っていたのだった。

    キロランケとアシリパの前を白石が走っていく。
    シライシ? とキロランケが声をかけると白石は走るのを止めてキロランケ達に近づいていく。

    「アシリパちゃーん!!」
    杉元の頼みであるアシリパとの合流を果たした白石。


    アシリパは開口一番、杉元は? と白石に問いかける。

    白石は、杉元は舎房の床下、通風口から出られずにいると答える。

    舎房に向けて駆けだそうとしたアシリパを、兵士がうじゃうじゃいる、と白石が引き留める。

    そのやりとりを見ていたキロランケが、自分が助けに行くと宣言。

    アシリパはキロランケに、のっぺら坊が教誨堂にいると伝え、杉元を教誨堂へ連れてきてと頼む。

    白石は、アシリパと正門で待つように言われているとそれを拒否する。
    3


    教誨堂にいるという本物ののっぺら坊が、果たして本物なのかを自分が会って確かめないといけないと主張するアシリパ。


    白石は杉元とアシリパを引き剥がそうとしている土方の元に行くことがダメなんだと説く。
    4


    「杉元から?」
    アシリパが少し落ち着いた様子で聞き返す。


    杉元を助けたら教誨堂に行く、とキロランケが駆け出す。

    正門までのっぺら坊を連れて来ると言うキロランケをアシリパが引き留め、腰から外したものをキロランケに渡す。
    「これを杉元に!!」


    メノコマキリ

    火の手が上がっている舎房。


    杉元は白石が脱出した通風口から必死の形相で頭だけ出して強引に抜け出そうとしている。
    「ふぬぬ…どうやったら肩を外せるんだよォ」


    「杉元!!」
    杉元に駆け寄っていくキロランケ。
    「馬鹿かよオマエ 出られるわけねえだろ!!」


    何やら杉元の目の前で作業を始めたキロランケに、どうすんだ? と問いかける杉元。


    キロランケは壁と土の隙間に手投げ弾を詰め込むと言って建物に接している地面の土を掘っていた。


    地面に掘った穴にキロランケの手投げ弾が詰めこまれる。
    導火線には火が点いている。

    「どこかに身を隠せ」

    唐突なキロランケの言葉に戸惑う杉元。

    ドンッ
    5

    6

    舎房の壁が手投げ弾で破壊される。

    二階堂が杉元たちの痕跡を探しているのっぺら坊(偽)の房内。

    のっぺら坊(偽)がうつ伏せに倒れている死体のお尻の辺りから煙が噴き出す。

    「え!? おなら?」
    房の中で杉元たちを探していた二階堂がのっぺら坊(偽)の死体に注目する。

    のっぺら坊(偽)を動かすと、そこだけ床板が外れているのを発見する。

    舎房の床下から抜け出した杉元。その身体は黒く汚れ、煙を纏っている。

    「教誨堂に?」
    キロランケから教誨堂に行くと聞いた杉元が問い返す。

    キロランケは、これをのっぺら坊に見せろって、とアシリパから預かっていたものを杉元に差し出す。
    7

    それはアシリパの、父親が作ったというメノコマキリだった。

    杉元はキロランケに、白石だけでは心配だから正門で待っていてくれと告げる。
    「俺がのっぺら坊を連れて来る 必ず会わせるとアシリパさんに伝えてくれ」

    了解し、キロランケは正門に向けて駆けだしていく。

    杉元は教誨堂に向けて敷地を駆けていた。

    駆逐艦の放った曳光弾が夜空を照らす。


    杉元がふと建物の壁に映った自分の影を見ると、背後から自分の首元に銃口を突きつけられているのに気づく。
    8


    ドバァン
    9

    弾が放たれる。


    杉元は左手を大きく振り上げながら素早く回転し、銃口を自分から逸らしていた。
    杉元に銃を突き付け、銃撃したのは二階堂だった。


    二階堂は身を屈めて左手で腰元の銃剣を手に取り、杉元の顔に向けて突き出す。


    杉元は口を開けて銃剣を左頬から突き抜けさせ、銃剣の刃を噛んで固定する。
    頬から突き出た銃剣の刃は左耳までも切り裂いている。


    刃を噛んだまま、杉元は鬼気迫る表情で二階堂を睨みつける。
    10

    教誨堂

    教誨堂内部に潜入した土方と都丹庵士。

    頭を傾け、床下から物音を感知した都丹庵士は、土方に何か聞こえると伝える。

    地下室があったのか、と呟く土方。


    犬童典獄はランプを片手に石壁に囲まれた狭く暗い地下室に入っていた。


    階段を降りた先にある鉄格子の内には何者かが胡坐をかいている。


    犬童典獄は鍵を開けて、出ろ、と短く命令する。
    11


    ピストルを構えた都丹庵士が呟く。
    「俺が犬童の両目をぶち抜いてやる」


    都丹庵士は、教誨堂内部を土方と分かれて探索する。


    ライフルを構えた土方は扉を開けて入室する。


    ゴッ


    鈍い音が響く。
    都丹庵士は、土方とは別の扉を開けた瞬間、鉄球を前頭部に受けていた。


    鉄球に繋がった鎖を振り下ろしていたのは犬童典獄。


    ドンッ


    都丹庵士は崩れ落ちながらも前方に向けてピストルを発射する。


    その銃声に土方は前の部屋に戻る。


    そこにいたのは、頭部から血を流し、仰向けに倒れている都丹庵士。
    その傍らには壁にもたれて力なく座り込んでいる犬童典獄。もたれた壁には犬童典獄の血が擦り付けられたような軌跡を描かれている。


    土方は都丹庵士に近寄り、その首元に手を当てて生存確認をする。
    すぐ近くに何者かの気配を感じ、振り向いた土方の視線の先には囚人服を着た男が杖に縋って立っている。

    「のっぺら坊…」
    12

    のっぺら坊はその場に立ったまま、土方をじっと見据えている。

    ガチンッ

    ライフルを持つ土方の左腕、手首に素早く囚人を拘束する錠を付けた犬童典獄は腕を振る。

    鎖の音が鳴り、土方の持っていた銃が床に投げ出される。

    錠をはめた犬童典獄の左手首、そして土方の左手首は、互いに鎖で繋がっている。

    ジャギィッ

    互いに腕を引き合う。両者の間で鎖はピンと張り詰める。
    13

    犬童の右腕にはサーベルが握られている。

    「死が…ふたりを分かつまで…」
    14
    犬童典獄は満身の力をこめ、手首を引き絞る。

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    ゴールデンカムイ 第133話 『700人の凶悪犯

    土方、都丹庵士と相対しているアシリパ。


    土方から脱出を促されるが、アシリパは杉元と一緒じゃないと脱出はしないと土方に言い放つ。


    土方は動じる事無く、ここに来た目的を忘れたか、とアシリパに問いかける。



    そもそもこうして網走監獄に侵入したのは、のっぺらぼうが娘であるアシリパを見て金塊の情報を話すことが目的だった。
    であれば、杉元もアシリパとのっぺらぼう――父親との再会を望むはずだ、と土方はアシリパを諭す。
    1


    アシリパは伏し目がちになって黙った後、どこにいるんだ? と土方に問いかける。


    窮地に陥る杉元

    「下がれ」
    杉元は、扉の陰に隠れてのっぺらぼうのこめかみに銃口をつきつけたまま、まだ金塊の在り処は聞けていない、と肉薄する鶴見中尉達を牽制する。


    外で看守と戦っている兵を含めて63名の部下を連れてきた、と言う鶴見中尉。


    鶴見中尉の背後には月島軍曹、鯉登少尉が杉元に向かって銃を構え、さらにその背後には第七師団兵が大挙して押し寄せて来ており、その数は監獄の廊下を完全に満たしている。


    のっぺらぼうに向けて銃を突き付けることが逃走の成功に繋がると思っているのか、と鶴見中尉は杉元に静かに問いかける。


    「試してやろうじゃねえか」
    杉元は叫ぶ。
    「全員武器を置いてここから…」
    2


    ドンッ



    杉元が身を隠している扉を銃弾が掠める。
    うわっ、と杉元はのっぺらぼうと共に身を縮める。


    「二階堂ッ!!」
    鶴見中尉が振り向く。


    発砲したのは二階堂だった。その目は完全に杉元に対する憎しみで血走っている。


    月島軍曹が平静を失っている二階堂の首根っこを押さえる。


    「離せッ 俺が殺す約束だろッ!!」
    狂人のような形相で叫ぶ二階堂。
    3


    「バカヤローッ」
    杉元はのっぺらぼう(偽)と共に元の監獄へと身を潜め、扉を閉める。
    「のっぺらぼうに当たったらどうすんだッ」


    二階堂の凶弾はのっぺらぼう(偽)の頭部を捉えていた。
    「う…!?」
    杉元は、力なく頭を横たえ、ビチャビチャと頭から血を垂れ流しているのっぺらぼう(偽)を見て呻く。


    杉元は焦る気持ちを必死で抑えつけながら、早く全員この建物から出ろ、と鶴見中尉達に向かって叫ぶ。
    「のっぺらぼうの頭をぶち抜くぞッ いいのか?」
    4


    横目で杉元の様子を窺いながら作業を続ける白石。



    のっぺらぼうの房内は煙で満たされつつある。


    門倉の奥の手

    「!?」
    宇佐美上等兵が背後を見る。


    門倉が見張り場所から、腰を屈めてこそこそと出て行くところを目撃する。


    「門倉部長殿ぉ!?」
    宇佐美上等兵は、お久しぶりでーす、と不気味な笑顔を貼り付けて門倉に向けて一直線に駆け寄る。
    5


    門倉は、何なんだよそのホクロッ、と言い捨てて宇佐美上等兵から逃げるために駆け出す。


    宇佐美上等兵が銃を撃つ。


    「ぐあッ」
    銃弾は逃げる門倉の左肩に当たる。


    宇佐美上等兵は、門倉部長すみません、と銃を構えたまま歩いて門倉との距離を詰めていく。
    「首を狙ったんですけど…」
    宇佐美上等兵の表情には何の感情も籠っていない。


    暗がりに門倉を発見した宇佐美上等兵は、門倉が何かレバーを掴んでいることに気づく。


    「新人…」
    門倉は右手で、大きなレバーを手にしつつ、宇佐見上等兵を見ている。
    「まだこの装置のこと説明してなかったっけ?」


    ガシャン
    6


    門倉はレバーを押し出す。
    「樺戸監獄で考案された火災時に作動させる一斉開房装置だ」


    ガコン、という音を合図に、網走監獄に収容されている囚人たちの房が一斉に開く。


    固まる宇佐美上等兵。


    「700人の凶悪犯と戦う覚悟は出来てるか?」
    額に脂汗をかきつつも、門倉は宇佐美上等兵に向かって冷静に問いかける。
    7


    第七師団兵63人 対 700人の凶悪犯

    鶴見中尉達が陣を構えている棟にある全ての房の扉も同時に開く。


    中からゆっくりと姿を現す凶悪犯たち。


    「おおおおおおおおおおおおお」
    8


    雄叫びと共に他の棟から現れた凶悪犯たちが大挙して宇佐美上等兵に突っ込んでいく。


    宇佐美上等兵は銃を持ったまま必死に逃げる。


    「着け剣ッ」
    脳汁を垂らしながら、鶴見中尉が鋭く声を発する。


    第七師団兵たちは鶴見中尉に命じられた通り銃に剣を装備する。


    「一匹残らず駆除だッッ」
    銃口を囚人たちに向ける鶴見中尉。脳汁がどんどん溢れてくる。
    9


    ズドンッ


    鶴見中尉の銃撃が囚人の顔にヒット。そして素早く排莢する。


    他の第七師団兵も表情を変える事無く囚人の群れに照準を定めて発砲する。


    囚人にヒットするが、その背後からすぐに囚人が現れ、あっという間に第七師団兵との距離は縮まっていく。


    「おおおおおおおおおおおおおおおおお」


    第七師団兵は肉薄してきた囚人に銃剣を突き刺す。


    「おおおおおおおおおおおおおおおおお」


    囚人は第七師団兵に蹴りを食らわせる。


    男たちの雄叫びが監獄に響く。


    いくらか冷静になっていた二階堂は杉元が身を隠した房の扉を開ける。


    そこにいたのは、床にうつ伏せに横たわったのっぺらぼう(偽)のみ。


    部屋の隅で上がっている火の手は房内に煙を供給し続けている。


    杉元ぉ? と房内を見渡す二階堂。
    10


    本物ののっぺらぼうの行方

    杉元と白石は、白石が拓いた床の通気口の内部を這っていた。


    杉元は、土方が仕組んだに違いないと呟く。


    都丹庵士もグルならアシリパは土方と一緒かも、と返す白石。


    自分たちをのっぺらぼう(偽)の房に侵入させて騒ぎを起こす事により、不安になった犬童典獄が本物ののっぺらぼうの元に向かうはずだ、と白石。


    監獄内部には男たちの怒号と銃声が響き渡っている。


    犬童典獄は阿鼻叫喚となっている監獄を尻目にどこかへと足を進める。


    「最初っからそれが土方の狙いだった」
    全てを喝破した杉元。
    門倉が杉元と白石をのっぺらぼう(偽)の房に釘付けにしている間にアシリパを本物ののっぺらぼう――アシリパの父ウイルクに会わせて金塊の在り処を聞き出して脱出する。
    「この機会にアシリパさんから俺を引き剥がすつもりだ」
    いつか俺が邪魔になるはずだから…、と冷静な杉元。
    11


    「ふぬぬ…」
    白石は外に続く通気高から顔だけを出す。


    外に抜け出た白石。その肩は関節を外している。
    「通風口が思ったより狭かったが両肩を外せば出られるぞ」


    出来るかぁ!! と突っ込む杉元。


    通風口を壊せるものを探す、とその場を動こうとする白石に対して、杉元は、自分で何とかするからアシリパを探しに行け、と通風口から腕を伸ばして叫ぶ。


    杉元は、近づいてきた白石の襟を握って引き寄せる。
    そして、アシリパを確保できたら正門で待て、と必死の形相で頼む。
    「アシリパさんを頼むぞッ白石!!」
    12


    犬童典獄は教誨堂に来ていた。


    その後をつけていた土方、都丹庵士、アシリパ。


    土方は、やはり教誨堂だった、と呟く。


    犬童が毎日稽古で出入りすることから怪しいと思っていたが、門倉が何度か教誨堂を調べても何も見つける事が出来なかったと土方は続ける。


    「ここにいるんだな?」
    教誨堂を真っ直ぐ見ながら、土方に問いかけるアシリパ。


    土方もまた教誨堂を鋭く睨む。
    「犬童典獄がのっぺらぼうを動かす瞬間を押さえる!!」


    「行けッ シライシ!!」
    鋭く叫ぶ杉元。
    13


    真剣な表情で駆けていく白石。

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    ゴールデンカムイ 第132話 『蹂躙

    網走監獄の敷地内の宿舎は第七師団の砲撃で半壊していた。


    監獄の外からの穴を通じて宿舎に逃げてきていた谷垣、夏太郎、インカラマッ組。


    小屋に崩落の気配があることを悟った夏太郎は外に出ろと谷垣を促す。


    谷垣はインカラマッがいないことに気付きインカラマッどこだ、と呼ぶ。
    1


    絶体絶命の谷垣とインカラマッ

    「谷垣ニシパ…」

    足元から微かな声でインカラマッが谷垣に応える。


    インカラマッは首だけ外に出した状態で、崩落した屋根に圧し潰されて身動きが取れずにいた。


    なお宿舎の崩落は止まらない。


    インカラマッは自身の運命を悟り、必死で谷垣に、逃げてください、と呼びかける。


    谷垣はインカラマッに乗りかかる瓦礫を持ち上げようと、屋根と地面の間に手を差し入れて屋根を掴む。

    2


    ムウウオッ、と満身の力を込める谷垣。

    胸のボタンが弾け飛ぶ。


    必死な谷垣を見上げるインカラマッ。


    谷垣は見事に屋根を浮かせて、インカラマッが動けるだけのスペースを確保する。


    出ろ、と谷垣に促され、インカラマッは何とか谷垣の元へと這い出る。


    途端に宿舎は崩落し、直前までインカラマッと谷垣が居た場所に瓦礫が積もる。


    谷垣はインカラマッの腕を持って立ち上がらせてその場から一刻も早く逃げようとする。

    しかし瓦礫の崩落の波は、必死に外に向かって逃げようとしている谷垣とインカラマッに追いつく。


    崩落する屋根に圧し潰されそうになり、谷垣とインカラマッは思わず目を閉じる。


    フラグクラッシャー牛山

    だが、地面にインカラマッと共に転んだ谷垣を圧し潰そうとした屋根は、その動きを止める。
    3


    「牛山!!」

    谷垣が叫ぶ。


    牛山は、その持ち前の膂力を以って、谷垣とインカラマッを圧し潰さんとした屋根を両手で受け止めていた。


    「早くどきな」

    苦しそうな表情で牛山が谷垣とインカラマッに呼びかける。


    屋根の下から這い出た谷垣とインカラマッ。

    インカラマッは牛山に早くこっちに来るように促す。


    下を向いて必死に力を発揮し続けている牛山は、屋根を持ち上げたまま視線だけを谷垣とインカラマッに向ける。

    「お前ら…幸せになるんだぜ」


    「そんな…!! 牛山さんッ!!」

    牛山を救おうと近づく夏太郎。

    だが谷垣が夏太郎の首に腕を回して引き止める。


    崩れ落ちる瓦礫。


    「どっこいしょ」
    4

    牛山は支えていた屋根を思いっきり投げ飛ばす。

    「背広が汚れたぜ」

    何事も無かったような表情でパンパンと腕をはたく牛山。


    牛山さんスゲー、と若干引き気味の夏太郎。

    谷垣もインカラマッも呆然と牛山を見ている。


    ドドン、と駆逐艦から何かが発射される。


    発射された何かは監獄の上空を照らす。


    その光に照らされる谷垣と牛山。

    谷垣はそれが日露戦争で使用された照明弾だと呟く。
    5


    一方、一行から姿を消していた土方は、監獄の塀に沿って悠々と歩いていた。


    進撃する第七師団

    上陸を遂げた第七師団は、さらに監獄内へと攻め込んでいた。


    攻め込む第七師団と監獄を守る看守とで激しい銃撃戦の様相を呈している。
    6


    看守たちは銃だけではなく、機関銃でも第七師団を迎撃する。


    鶴見中尉は傍らの月島軍曹に、やれ、と命じる。


    「はい!!」

    月島はおもむろに手元の爆弾のピンを抜く。

    尻側にある布の部分を掴んで回し、その遠心力で看守に向かって爆弾を放る。


    「なんか投げたぞ」

    看守が隣で機関銃を撃つ看守に注意を促す。


    「え?」

    緩やかな放物線を描き飛んでいく爆弾は、機関銃を撃っていた看守のおでこに、しかもちょうど信管がヒットする。
    7


    看守の二人は爆発に巻き込まれる。


    第七師団は鶴見中尉の、前進して蹴散らせッ、という号令を合図に一気に攻め込んでいく。
    8


    慌てる杉元たち

    のっぺらぼう(偽)の独房では、白石が床をのこぎりで切断していた。


    何やってんだ? と尋ねる杉元に、白石は、全ての監房の床下には通気の為に狭い空間があると説明する。


    あーッあーッ! とのっぺらぼう(偽)が杉元たちに視線を送りながら叫んでいる。


    作業を邪魔され、うるせえなマジで!! とのっぺらぼう(偽)に罵声を浴びせる白石。
    9

    杉元も、おとなしくしてろよ、と怒る。


    しかし、のっぺらぼう(偽)は叫ぶのを辞めない。

    のっぺらぼう(偽)が、その両手の人差し指で必死に指し示した方向では布団から炎が上がっていた。


    杉元と白石ものっぺらぼう(偽)と同じ調子であーッあーッと叫ぶ。


    アシリパは都丹庵士の「父親に会いたくないのか?」という言葉に、一度は杉元の元へと向かった足を止めていた。


    アシリパは都丹庵士に向かって、都丹庵士も門倉も監獄内ののっぺらぼうが偽物だと知っていたのかと問いかける。


    都丹庵士は、24人が脱獄した後すぐにのっぺらぼうは犬童によってすり替えられたのだと答える。

    門倉は七年のっぺらぼうを見続けていたため、すり替えに気付かないほど間抜けではないと続ける。


    「知ってて杉元たちをあそこに送り込んだのか!?」

    都丹庵士に向かって必死に問いかけるアシリパ。


    「おとなしくついて来い アシリパ」

    都丹庵士の背後から土方が現れる。

    「機を逃すぞ」
    10


    のっぺらぼうの房へと突き進む鶴見中尉


    監房が第七師団の爆撃に晒され入り口が破壊される。


    門倉の元にまで爆風の余波が伝わる。


    「何やってる早く逃げろッ」

    門倉は逃げながら、必死で傍らの看守に呼びかける。


    ドン
    11

    鶴見中尉の狙いすました銃撃が看守の顎にヒットする。


    「来たッ」

    その銃撃音の近さに、いよいよ第七師団の手が近いことを悟った杉元と白石。


    「のっぺら坊は?」
    12

    銃を片手でジャキッ、と排莢する鶴見中尉。

    その表情は歪んだ笑顔を浮かべ、脳汁が眉間を流れる。

    ギンギンになった鶴見中尉のその全身からはオーラが立ち上る。


    生き残った看守は素早くのっぺらぼう(偽)の監房を指し示す。


    第七師団は一気に看守の示した方向に駆けていく。


    門倉は見張り部屋の中に身を潜め、第七師団が通り過ぎるのを息を殺して待っていた。


    通り過ぎていく第七師団兵の中に、頬のほくろに棒人間を描き足した宇佐美がいるのに気づき、門倉はギョッとする。


    第七師団は鶴見中尉を先頭に、ズカズカと監房を行く。


    鶴見中尉は一つの監房の扉が空いて、のっぺらぼうが立っていることに気づく。

    そののっぺらぼうの傍らに杉元の姿を確認し、鶴見中尉は呟く。

    「不死身の杉元」
    13

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    ゴールデンカムイ 第130話 『誘導灯

    ナレーション~

    真実の〝のっぺらぼう〟なのか?


    看守
    「侵入者だぁ!!」


    鐘を鳴らす

    (カン カン カン)


    (カン カン カン)


    杉元
    「門倉の野郎どういうつもりだ」


    のっぺら坊?
    「ああああああ あああああ」


    都丹によって天窓へ引き上げられるアシリパ

    (グン)


    (ギュギュギュ)


    (グイッ)


    アシリパ
    「杉元ッ!!」


    杉元が銃を放つ(ドン)


    看守
    「あれ?銃がおかしい!! 弾が出ないぞ」

    「俺の銃も変だ!!」


    門倉
    「手入れしないからだろッ」
    1


    のっぺら坊?

    「ああああああ」


    白石
    「つまりこいつが・・・インカラマッちゃんの言っていた キロランケの仲間ってことなのか?」


    杉元
    「うるせえタコ!!」
    2

    杉元がのっぺら坊?を殴る (バチンッ)


    杉元
    「てめえキロランケの仲間か?どうなんだ?」


    のっぺら坊?が首を振る

    「ん~んッ!!」


    白石
    「こいつは『替え玉』ってことか?」


    「マジかよそこまでする?」


    杉元
    「わかんねえがとにかく・・・俺たちがハメられたのは確かだぜ」


    他の囚人が様子をうかがう


    囚人
    「見るか?」
    「いや」


    「オイ看守」
    「一体どうなってんだッ」


    アシリパ
    「待て都丹!! 杉元たちを待たないと」
    「あいつらトンネルまで戻れない!!」


    アシリパを抱え、屋根を移動する都丹


    アシリパ
    「どこへ行くんだ都丹庵士!! トンネルは反対方向のはずだぞ!!」


    都丹
    「本物に会わせる」
    3


    ナレーション~

    【網走監獄庁舎】


    鐘の音(カン カン カン)


    看守
    「犬堂典獄殿ッ 第四舎に侵入者だそうです」
    4


    犬堂
    「ついにのっぺら坊を奪いに来たか」



    (カン カン カン)


    キロランケ
    「まずいなこれは」


    牛山
    「早く戻ってこい・・・」


    夏太郎
    「おいおい・・・どうする?」

    谷垣
    「どうするも何もここで待機するしか・・・」


    そこへインカラマッがやって来る


    谷垣
    「インカラマッ!?」

    「どうしてここに?」

    「村で待機してるはずじゃ・・・」


    インカラマッ
    「谷垣ニシパ」

    「いますぐここから逃げてください ここにいたらあなたが巻き込まれてしまう・・・!!」


    見張りの看守
    「あッ」

    「来た・・・来た来た・・・!!」


    「第七師団が来やがった!!」


    インカラマッ
    「谷垣ニシパから小樽へ偽名の電報が届くと 私は彼らに教えていました」
    5


    谷垣
    「・・・・・・」
    「・・・・・・インカラマッお前なにを」


    看守
    「河口の方向から網走川対岸に無数の灯りが・・・!!」

    「橋の手前まで迫って来てます」


    犬堂
    「落ち着け」

    「訓練どおりにやるのだッ」

    橋が爆破される
    6


    (ドン)(ドドドン)


    谷垣
    「橋が!!」


    夏太郎
    「うわあ・・・」



    門倉
    「この爆発音は 例の橋に仕掛けた爆薬か?」

    「ってことはマジで攻めてきたのか?」


    土方
    「我々の動きは監視されていたか・・・」

    「侮れんな情報将校というのは」



    犬堂
    「対岸をつなぐ唯一の橋だ!! これでしばらくは時間が稼げる」

    「第七師団を迎え撃つ態勢を整えろッ」


    第七師団部下
    「橋が吹き飛びました」


    鶴見中尉
    「よぉし」
    7

    「これを待っていた!!」


    鶴見中尉たちは駆逐艦で移動していた


    ナレーション~

    【『雷』型駆逐艦】

    この駆逐艦は吃水(船体が沈む深さ)が1.85mしかなく網走川を容易に航行可能である


    川岸の50mおきに兵士が待っていると見せかけて並べた松明は

    そのまま駆逐艦の誘導灯となった


    【大湊要港部司令官 鯉登平二 海軍少将】


    鯉登少尉の父である


    鯉登少将
    「もすッ」

    駆逐艦が破壊された橋の箇所を通過する


    鶴見中尉
    「杉元や白石たちが金塊のありかを掴み 無事に脱出してくれることを期待していた」


    「殺し合うシャチ・・・」

    「その死骸を喰う気色の悪い生き物でいたほうが こちらの痛手は少なくて済むのだが・・・」


    第七師団部下
    「橋の残骸を通過しました」


    「どれだけ武装しようが看守は看守です」


    鶴見中尉

    「今夜は我々がシャチとなって狩りにいく」
    8


    「のっぺら坊とアシリパを確保せよ!!」
    9


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    ゴールデンカムイ 第129話 『五翼放射状平屋舎房

    ナレーション~

    表紙&巻頭先制パンチ!!


    (ゴンッ)


    杉元が見つかった見張りに先制パンチを見舞う

    見張りのランプが地面に落下する (ガシャッ)

    都丹庵士も他の見張りを背後から取り押える



    見張り

    「う~~っ」



    キロランケ

    「いきなり見つかってんじゃねーか」



    谷垣

    「都丹てめえ耳糞つまってんのか!?」

    「聞き逃してんじゃねえよバカ野郎」



    都丹庵士

    「うるせぇ!! テメエらこそランプの灯りを見逃してんじゃねえか!!」



    アシリパ

    「しぃ~~~~~~!!」



    キロランケ

    「ここはいいから行けッ」



    牛山

    「これで門倉部長は明日から無職のお尋ね者だな」



    キロランケ

    「幸先が悪い」



    監獄へ向かう

    都丹、杉元、白石、アシリパ



    ナレーション~

    【五翼放射状平屋舎房】



    700人以上の囚徒を収監できる建築物であり



    放射状に広がる5つの舎房の中央には

    全体を1箇所から見渡せるように六角形の中央見張り所がある


    門倉看守部長

    「舎房の夜勤は三人・・・」


    「作戦決行の夜は俺も三人の内のひとりとして当直に入るよう仕組んでおく」

    「勤務表を決める管理職だから出来ることだ」

    杉元

    「門倉さんが当直なら舎房の入口の鍵を開けとけば? 合鍵作っとくのもありだが」

    門倉

    「無理だ」

    「入口は見張り所の真ん前だ あそこから忍び込むのは危険すぎる」


    杉元

    「じゃあ俺達が押し入って他の看守を制圧するから開けろよ」


    門倉

    「抵抗されて一発でも銃声が響けば作戦は失敗だぞ」


    杉元

    「門倉が看守の銃に細工をしとけば?」



    門倉

    「出来ねえな」

    「常に凶悪犯に囲まれてる看守たちがお守りみたいに持っている銃だ」
    1



    杉元

    「『出来ねえ』じゃねえよ」

    「やるんだよ」
    2


    門倉

    「ああ?」



    土方

    「門倉には今後もここに残って情報を流してもらいたい

    内通者であるのがバレる方法は避けよう」



    白石

    「俺はよ・・・監獄に入れられると 『どうやって脱獄できるか』考える癖があるんだ
    どこに弱いところがあるのか建物を観察する」



    「網走監獄の場合・・・」

    「舎房のすべての窓には鉄格子がはめられているが」

    「ただ唯一 鉄格子のない窓がある」



    「天窓さ」

    「おそらく光を出来るだけ取り込みたいから鉄格子をつけてないんだろう」



    アシリパがロープを投げかけ、一行が屋根にあがる



    杉元

    「毛布を」



    アシリパ

    「枠ごと外せそうか?」



    白石

    「『脱獄』は手に入る道具が釘一本しか無い時もある」

    「それに比べりゃノコギリでも何でも持ち込めるんだから こんな楽なことはない」

    (ゴリゴリ)

    (ゴリゴリゴリ)



    門倉

    (音が漏れてるぞ)

    (メキメキメキッ・・・)

    見張り所の看守

    「・・・・・・」

    「今夜はほんとに風が強いですねぇ」



    門倉

    「ああ」



    (ガチャン)

    門倉

    「おっと」

    「あちゃ~俺の湯呑みが」



    「痛っ」



    看守

    「指切っちゃいました?」

    「大丈夫ですか?」

    「いいですよ門倉部長・・・片付けますから」


    門倉

    「ごめん」


    天窓から白石たちが舎房に忍び込む
    3

    第四舎 第六六房の鍵を白石が開ける



    杉元とアシリパも緊張する



    アシリパの回想~



    アシリパ父

    「アシリパおいで」



    アシリパ

    「アチャ(お父さん)・・・」



    ~回想終わり



    キロランケ

    「牛山・・・土方歳三はどこへ行った?」



    牛山

    「え? いないのか?」



    舎房内どこかの暗がりを進む土方の描写



    キロランケ

    「あやしいぜ あのジジイ」



    扉を開けて入るアシリパと杉元



    中にはのっぺら坊が座っていた



    アシリパ

    「・・・・・・  ・・・アチャ?」
    4



    「アチャなのか?」

    「私だアシリパだ」

    「小樽から会いに来た」


    杉元

    「白石マッチを・・・」



    白石がマッチをつける

    (シュッ)



    のっぺた坊

    「ア・・・」

    「アシ・・・」



    「あああああああ」



    「ああああああ」
    kamui129-7-331x500



    アシリパ

    「違う アチャじゃない」


    門倉が銃を放つ

    (ドオオン)

    「侵入者だ」

    杉元

    「門倉ぁ」
    6



    ナレーション~

    裏切り者の裏切り!!!!


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