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ゴールデンカムイ 第125話 『実りの季節

収穫をしながら赤ちゃんに子守唄を唄うフチ


ホルルルルッ


イテキ チシノ      泣かずに
モコロ モコロ      ねんねしな

エモコロ ヤクネ     ねんねしたなら
エコロ ミチ カ     お父ちゃんも
エコロ ハポ カ     お母ちゃんも


ネブキ ヤクネ      働けるだろうから
ソモ イペルスイ     ひもじい思いは
エキ ナンコンナ     しないよ


ニシパ エネ クニ    立派な人になれるように
カムイ エヌカラ     神さま見ていて
キ クスネ ナ      下さろう


モコロ モコロ      ねんねん
イテキ チシノ      泣かずに
モコロ モコロ      ねんねしな


【出展「アイヌ民族誌」久保寺逸彦訳】



ナレーション~

夏が終わり・・・。



フチ

「オンタロ シク『樽がいっぱいだ』オハオ♪」

「オハン ヤン『空けなさい』オハオ♪」
1 (1)

山道を歩く杉元とアシリパ



アシリパ

「今ごろフチは穀物を収穫しているんだろうな」

「大きな袋がピヤパ(ひえ)とかムンチロ(あわ)でいっぱいになる」

「空には雁が渡ってきて子供たちが追いかける」



アイヌの子供たち

「エムシ ランケ♪『刀 落とせ』」

「タマ ランケ♪『珠 落とせ』」



アシリパ

「エムシというのは男の儀式用の刀で」

「タマというのはタマサイという女の首飾りのこと」
1 (2)

「アイヌは鮭を獲って和人からエムシやタマサイを手に入れた」



「酒や食べ物とかを入れる漆器のシントコは鮭100匹と交換した」

「雁が毎年渡って来る姿は私たちに宝物をもたらす 鮭が川を遡ってくることの知らせだからだ」



「私たちは鮭のことをカムイチェプ『神の魚』とか」

「チュクチェプ『秋の魚』と呼んでいる」

1 (4)


「ニセウ トゥイ ナー フィー『どんぐりがおちてるよ♪』」

「ニセウ トゥイ ナー フィー『どんぐりがおちてるよ♪』」



「ニセウ(どんぐり)は実をゆでてから干すと渋が抜けて甘みが出る

シントコに保存しておやつにしたり挽いてお餅にもする

ヒグマもこの時期ニセウをたくさん食べる」



「見ろ杉元ハッ(ヤマブドウ)だ」

「わたしの靴はこのヤマブドウの蔓で編んだものだ」



「カムイがこの蔓を耳たぶに下げた」

「私たちの耳輪はそれを見習ったものだ」
1 (3)

「小さい頃 耳たぶに穴を開けると塞がらないようにヤマブドウの蔓を通しておく」



「杉元あれ採ってくれ クッチだ」

「酸っぱくて元気が出るぜ」

「食べすぎるな杉元 ハッを沢山食べると舌が痛くなる」



杉元

「チュパ」

アシリパ

「チュパ」

杉元

「サルナシの蔓はかんじきになるんだよな?アシリパさん」


アシリパ

「そうだ!よく覚えてたな杉元」



杉元

「クッチ美味いよアシリパさん」

「とっても甘い」



アシリパ

「クッチはヒグマも大好きでこの時期たくさん食べるんだ」

「いっぱい食べろ杉元 クッチは食べ過ぎると肛門がとても痒くなる もっと食べろ杉元」
1 (5)

杉元
「チュパチュパ チュパチュパ チュパチュパ」



アシリパ

「東に住むアイヌは野いちごをサケイチゴと呼ぶそうだ」

「実が赤くなると鮭が遡ってくる知らせになるからだ」

「ホザキシモツケの花が散ると鮭が遡ってくる知らせだという地域もある」



杉元

「そうやってアイヌは鮭を待ち望んでいたんだねぇ」



キロランケ

「これは俺達がマレクと呼んでる鈎銛だ」

「突く時はモリとなり魚を引き上げる時は先端が回転してカギの役目に変わる」
1 (6)



「イサパキクニといって魚の頭をたたいて殺す『なづち棒』だ」

「この棒でたたくと鮭はこれをくわえて喜んでカムイの国に帰って行く」



「腐った木や石で殴ると鮭はくやし泣きしてカムイの国に帰るので」

「魚を支配するカムイの怒りをかうことになる」



「鮭は鹿と同じようにそれ自身がカムイではなく

天上のカムイの袋の中に入っていて海にバラ捲かれるものなのさ」
1 (7)

「アイヌにとって鮭は主食で水や空気と同じ当たり前に存在するものと考えてる」



「だからといって鮭を粗末に扱ったり川を汚せば

カムイの袋の口は開かれなくなり 人間はひもじい思いをしながら冬を越すはめになる」



アシリパ

「見ろ杉元 尾根じゃない立木にヒグマが爪で横に引っ掻いた跡がある」

「これは熊同士に通じる印で自分の領域を知らせるものだ

チセ シロシ『家の印』と猟師は呼んでいる 近くにヒグマの巣穴があるからだ」



「このへん一帯の笹が刈り取られている」

「ヒグマが冬に備えて巣穴に運び込んだからだ」

「かなり巣穴が近い証拠だ」



「この時期はサルナシの実ばっかり食べて 肉がクッチみたいな味のするヒグマがたまにいる」

「どうする?獲ってみるか?杉元」


杉元

「いや俺クッチでいいわ チュパ」



アシリパ

「雪が降り出すとヒグマはサルナシやヤマブドウの蔓の硬い皮とかを食べるようになる

肛門に栓をするためだ その頃にはお腹が空っぽになってる それで穴に篭もる準備が完了だ」


杉元

「本当によく知ってるねえアシリパさんは」


アシリパ

「全部アチャ(お父さん)が教えてくれた 山のこともアイヌのこともすべて・・・」


「杉元・・・」


「私は・・・怖い」


「アイヌを殺して金塊を奪ったのっぺら坊が私の父だったらどうしよう・・・」



鮭を獲る小舟に乗ったキロランケ・谷垣・土方の3人は網走監獄の外壁に近づいていた


土方が外壁に鋭い視線を向ける
1 (8)


杉元
「アシリパさん ここまで来たらもう会うしかない」



【網走監獄】
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杉元

「何があっても最後まで俺がついてるから」
1 (10)



ナレーション~

過去も未来も現在、全てが集う。