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ゴールデンカムイ 第141話 『樺太アイヌ

小型の得体のしれない獣に襲われていたヒグマが一目散に逃げていく。
それを横目で見送る杉元と谷垣。
1


鯉登少尉は残された獣を近くで観察している。

そんな鯉登少尉に、離れて下さい、と獣に向けて銃を構える月島軍曹。


「これがさっき言ってたヒグマより凶暴な奴なのか?」
なんか弱そうだな、と余裕の表情の鯉登少尉。
「目もつぶらで可愛いではないか月島軍曹」

獣を警戒している杉元。
リュウが獣と距離をとっている事を指摘し、狂暴さを感じ取っている。


ゴルルルッ

獣が鯉登少尉の背後に素早く回り込み、その背中に噛みつく。
2


雪上に俯せに倒れる鯉登少尉。
月島ァ! と叫び助けを求める。


北海道には樺太とは違う動物が生息している。
鯉登少尉の背中の上で噛みついたままの獣はイタチ科のクズリ、英語ではウルヴァリンと呼ばれる獣だった。


ヒグマからも獲物を横取りするほどに狂暴な気性を持つことから、現地のロシア人からは「熊より恐ろしい」対象として警戒されている。
3


月島軍曹はクズリの腹を蹴り上げて鯉登少尉の背中から吹っ飛ばす。

木にぶつかったクズリに銃の照準を合わせるが幹に命中する。


「こいつ素早いぞッ」
月島軍曹は次弾を銃に込める。


チカパシの挺身
クズリはクマを始めとした大型の哺乳類に対して、木の上から相手の背中へ飛び掛かって背骨を攻撃する。


木の上からジャンプするクズリ。
樺太アイヌの女の子に背後から襲い掛かる。


チカパシが抱き着くような形でクズリから身を挺して樺太アイヌの女の子を守る。
4

「でかしたチカパシ」
杉元がチカパシの背中にくっついているクズリの背中と後頭部の皮を持って引き剥がす。
「その子を連れていけッ谷垣」

谷垣が女の子とチカパシを抱き寄せる。


「その子はアシリパさんの情報を持っている」
必至の形相で叫ぶ杉元。

5
そして、クズリを雪上に抑えつけたまま、月島軍曹を見る。
「投げるぞッ いいか月島軍曹ッ」

よしッ、と銃を構えた月島軍曹が一言合図で杉元がクズリを投げる。

ボンッとクズリが雪上を弾むクズリ。

ドンッ

月島軍曹がクズリを狙撃する。

やったか? とクズリのいるであろう方向を見ながら杉元が呟く。

「わからん」
月島は鯉登少尉を背負いながら答える。
「とにかく離れるぞ 走れッ」
6

谷垣は女の子とチカパシをそれぞれ脇に抱えて、杉元達よりも先行してその場を逃げている。

その場を後にする杉元達。


危機一髪
「来たぞ月島ァ!!」
月島軍曹に背負われたままの鯉登少尉が呼びかける。


クズリは体長わずか1メートルほどだが、足の裏が成人男性の手の平ほど大きく雪上でも素早く移動する。


鯉登少尉を背負ったままの月島軍曹は銃を使えない。


「杉元撃て!! 追いつかれるぞッ」
慌てる月島軍曹。


杉元は月島軍曹に言われる前に、既にクズリに向けて銃の照準を合わせている。
銃が苦手な杉元の表情に大量の汗が流れる。


「エノノカ!!」
犬橇(いぬぞり)に乗った樺太アイヌのおじいさんが颯爽と現れる。
7


犬橇だ!! と谷垣。


「ヘンケ(お爺ちゃん)!!」
アイヌの女の子――エノノカが笑顔で呟く。


一行は急いで犬橇に乗る。

そしてすぐに犬橇は走り出す。


後に残されたクズリが遠くなっていく。

「トホ! トホ! トー!」

「トホ! トホ! トー!」


前進! と犬に命令するヘンケ。


「あきらめたみたいだぜ」
クズリが追ってこない事からそう解釈する杉元。


谷垣いじり(笑)
ヘンケは進行方向から目を逸らさずに、パーセ(重い)!! と一言口にする。

「ヘンケが『重い』って言ってる! 犬が疲れちゃう」
エノノカが後ろに乗っている杉元達に向けて呼びかける。


「谷垣一等卒!! 貴様のせいだ」
鯉登少尉が真っ先に谷垣に向けて言い放つ。
「牝牛のように太りよってからに!!」

ええ? と戸惑いを見せる谷垣。

「そうだな… 肥え過ぎだ」
杉元は谷垣の腰に回していた手を上にスライドさせ、谷垣を橇から投げ捨てる。


鯉登少尉が雪上を転がる谷垣。
お尻がプリンッと弾む。


「走って痩せろ谷垣一等卒」と鯉登少尉。

樺太アイヌの集落
大泊の近く、樺太アイヌの集落に辿り着いた一行。


千島、北海道、樺太と三つに分かれているアイヌ文化。
当時の樺太アイヌは漁業中心の生活をしていたという。


一つの木造りの小屋を手で示すエノノカ。
「私とヘンケここでふたちで住んでる でもここ『夏の家』」
寒くなると『夏の家(サハチセ)』のすぐ近くにある『冬の家』に移るのだと説明が続く。
8


樺太アイヌは家がふたつあんの? と杉元。


集落まで走り切った谷垣が腰を下ろしているすぐそばではヘンケが犬橇を引く『犬繋ぎ竿(セタクマ)』に犬を繋ぐ作業をしている。


リュウは犬橇を引く犬の集団の中で、ただ一匹頭頂部に飾りをつけられている犬を見て、憧れているような素振りを見せる。


こっちが『冬の家』、と雪で覆われた家へと案内される杉元達。


トイチセと呼ぶその家はまるでかまくらのような形状をしているが、その中はきちんとした木で作られており、家具もあり、煙突もある。


北海道よりもさらに北に位置する樺太で、その過酷な自然環境に適応した結果生まれた文化である独自の生活だった。


「臭い臭いッ 何を塗っているのだ!?」
ヘンケが上半身をはだけた鯉登少尉の背中に何かを塗り込んでいる。


熊の油は傷に良いのだそうです、と月島軍曹が説明する。



エノノカ
「助けてくれてありがとう」
笑顔でチカパシを見るエノノカ。
「名前は?」


「おれチカパシ ちんちんが勃起するって意味だ!!」


ボッキ? と不思議そうに呟くエノノカ。
「わたしエノノカ 『フレップ(コケモモ)』って意味」
エノノカは、フレップをたくさん食べて全部戻したから付いた名前だと説明する。


ほかに名付けるきっかけ無かったのかい? と静かに突っ込む杉元。

「北海道から来たアイヌの女の子もうちでフレップ食べた」
杉元の顔を見つめるエノノカ。
杉元から受けとったアシリパの写真を見て、この女の子! と答えるエノノカ。

連れの男たちがいなかったか? という杉元に、
9

エノノカは、三人いた、と即答する。

「この男はいたか?」
谷垣がキロランケの写真をエノノカに見せる。

いた、とエノノカ。
「『北へ向かう』って言ってた」
10


北…と谷垣が呟く。


アシリパが樺太にいると確信
「女の子はどんな様子だった? 元気だったか?」
杉元が真剣な表情でエノノカを見つめる。


「元気ない とてもとても悲しそう 何も話さなかった」
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「……」
エノノカの答えを聞いて俯く杉元。



「でも…フレップの塩漬け出したら食べた」


杉元達の前にはフレップの塩漬けがある。



「…」
一口食べる杉元。
「しょっぱくて酸っぱくて甘い…」


「フレップいっぱい食べたらちょっと元気になった」
口いっぱいにフレップを頬ばるアシリパを思い出すエノノカ。
「ちょっと笑って『ヒンナ』って言ってた」



「……アシリパさんだ 間違いなくアシリパさんだぜ」
安堵したように笑う杉元。
「確かにこの村にいた やっぱり樺太に来てたんだ…!」
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